RippleのXRPはIoVに必要なのか?

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2016年5月29日

XRP

今日は、暗号通貨を購入しているユーザーの間で度々話題になっている、いわくつきの暗号通貨「XRP」について考察します。XRPのいわくとは何か。それは幾つもあるのですが、最大のいわくは、何といっても、まことしやかにささやかれている「XRP不要説」です。

 

では、さっそく参りましょう。まずは、XRPとは何かを簡単に説明します。

 

XRPとは?

XRPの位置づけは、IoVのユースケースで言うと海外送金に該当します。
「海外送金で使うブリッジ暗号通貨」がXRPです。

より具体的に説明すると、XRPは、Ripple Consensus Ledger Network(以降、RCLネットワークと呼ぶ)の基軸トークンです。RCLネットワークとは、Ripple Labsが開発した分散型暗号元帳のネットワークのことで、オープンソースライセンスとしてGithubにソースコードが公開されています。

 

Ripple社は「XRPポータル」で次のようなメッセージを謳っています。

Rippleの分散型金融テクノロジーにより、世界中の銀行がセントラルカウンターパーティーやコルレス銀行の必要なく互いに直接取引できるようになります。

ここで言う、Rippleの分散型金融テクノロジーというものは、RCLネットワークのことを指していると思われます。RCLネットワーク上で、XRPを利用することによって、海外送金の仕組みをシンプルにすることができるとRipple社は謳っています。

XRPが普及する前後の銀行業界の、海外送金のイメージはこうなります。(XRPポータルより)

benefit

 

前述の言葉の繰り返しになりますが、XRPは「海外送金で使うブリッジ暗号通貨」です。多くの通貨によって入り組んだ海外送金と外国為替の基盤を、シンプルにする潜在力を持つのがXRPだ、と理解して良いでしょう。

 

XRPの存在価値とは?

XRPのイメージは何となく理解できたのではないかと思います。続いて、このブリッジ暗号通貨の具体的な存在価値について深ぼりしましょう。日本では、一部の人を除いて、XRPの存在価値は正しく理解されていないのが実情ではないかと思います。

 

Ripple社が公に説明しているXRPの存在価値は、
海外送金における財務業務の効率化です。(「銀行のコスト削減例」より)

 

財務業務の何を効率化するのかというと、現金調達に関する手間と費用の削減です。Ripple社は、XRPの採用により海外送金における現金調達、口座管理のコストの7割程度を削減できると見込んでいます。

では、それがどういうことか噛み砕いてみましょう。

コルレス銀行モデル2

銀行が外国の銀行に送金するためには、送金先の銀行とその手続きを事前に決めなければいけません。しかし、外国のあらゆる銀行とそのような手続きを個別に取り決めて、契約することは、現実的ではありません。そのため、一般的な銀行は、取引のある外国の大手銀行に、現地での代行送金を依頼する契約(=コルレス契約)を結んでいます。この契約によって、現地での送金を代行してもらうのが一般的と言われています。

このような形で、コルレス契約を結んだ外国の銀行に送金を代行してもらうためには、相応の手間(=コスト)が必要になります。

<国際送金にかかる財務業務と送金業務コスト>

  1. 各国、各通貨ごとに、コルレス銀行と口座契約を締結する(財務)
  2. 各国の通貨を調達し、各コルレス銀行口座に、資金を振り込んでおく(財務)
  3. 各コルレス銀行に送金代行を依頼する(送金)

このような手間がコルレス銀行モデルの海外送金には必要です。もちろん、最終送金先の銀行と個別に送金方法を決めて、という煩雑な作業をするよりもよっぽど効率的ですが、現在の仕組みをさらに効率化するというのが、XRPを利用する目的です。コルレス銀行による送金代行の利用を廃止することで、上記の1.(口座管理)と 2.(現金調達)の煩雑さを低減できるとRipple社は説明しています。

国際送金をする銀行は、コルレス銀行に口座を開設し、その口座に外貨を預金していますが、この業務を廃止します。その代わりに、RCLネットワーク上の口座に現金資産としてXRPを保有するようにします。外国通貨は送金の実行時にXRPからリアルタイムで交換するものとして、現金資産としては保有しなくするのです。

これを実現する送金ネットワークのイメージは次のようになると、私は理解しています。

RCLモデル

これが、Ripple社が言う「XRPを使う」ことによって実現するコスト削減だと考えます。海外送金用の現金資産としてたくさんの種類の外国通貨を保持し続けることをやめて、そのための煩雑な口座管理業務もやめて、業務をスリム化するということです。

以上、XRPの存在価値は理解してもらえたでしょうか。繰り返しですが、XRPの存在価値は、資金調達コストの低減にあります。煩雑な口座管理や現金調達業務を、XRP口座に一本化することで効率化します。

それでは、ここからが本題です。XRP不要説を生む原因に迫ります。

 

EarthportによるXRPの需要はなかった…

2016年4月上旬のある出来事によってXRP不要説は真実味を帯びました。RCLを2016年1月から自社の送金サービスに取り込んだEarthport社の製品開発責任者のJaramillo氏が、コインデスクのインタビューで「XRPを使わなくてもRCLを使えば十分な効果が得られる。我々のプロジェクトにXRPは必要ない」と答えたのです。この発言により、EarthportにはXRPの需要がないことが分かり、XRPを保持している投機家を大きく落胆させました。RCLを利用している業者が「XRPは我々のプロジェクトに必要ない」と言っているのだから、XRPは無用の産物であることが明らかになったと考える人もいたようです。このインタビューの頃より、XRPの市場価格は下降トレンドに入りました。(2016年5月29日現在もトレンド継続)

Jaramillo氏は、インタビューの後半で「デジタル通貨の使い方は分かっている。デジタル通貨には将来性がある。しかし、中央銀行や政府が、金融機関のデジタル通貨利用を承認しなければ、キャズムを超えることはできない」と言っています。つまり、当局から暗号通貨の取り扱いガイドラインが出ない限りは、XRPは金融機関には「扱えないもの」であるという見解が、XRP不要説を裏付けるような恰好になっています。

より正確に言えば、XRPが不要というよりも、金融規制当局からのガイドライン発行を待たないと、「資金調達コストを低減する」という能力を発揮するためのスタートラインに立てないということです。

 

2つの大きな課題と「鶏が先か、卵が先か?」

XRPはさらに2つ大きな課題を抱えています。XRPによる資金調達業務コストの低減は、これから言う2つの課題の解決を前提にしており、これらを解決できない場合には、XRPは「効果がなく、使えないもの」としてその生涯を終えなければならないリスクがあると考えます。

<XRP導入の前提事項>

  • XRPと法定通貨の外国為替を価格優位性のあるレートで実行出来ること。
  • 送金先の銀行が、送金元と同じネットワークでつながっていること。

 

  1. XRPと法定通貨の外国為替を優位性のあるレートで実行出来ること
    国際送金に関する資金調達コストの低減がXRP導入の目的であるならば、XRPと法定通貨のFXレートが他の通貨ペアよりも悪いようでは、コスト削減はままならず、XRPは利用する価値に値しません。そのため、為替流動性の高さ(いわゆる売買の板の厚さ)が重要になり、インターバンクのXRP/外国通貨のマーケットメーカーの参入は必須だと考えられます。
    しかし、ここに問題があります。この市場にマーケットメーカーが参入するのは、海外送金にXRPを用いる優良顧客(銀行)の需要があるから、ということになりますが、現在XRPを用いて海外送金をしようという顧客が存在していません(少なくとも公に発表している企業はありません)。そうであるならば、マーケットメーカーは、初期投資をしてこの市場に参入しても費用を回収して利益をあげる見込みが立ちません。しばらく様子を見て、市場が拡大してから参入した方がリスクヘッジになります。
    一方で、顧客の方は、マーケットメーカーのいないこの市場では、コスト削減が実現できるか否か疑わしいので参入を決定しません。かくして、誰もが様子を見たまま、時だけが過ぎていきます。まさに「鶏か卵か」の話です。

  2. 送金先の銀行が、送金元と同じネットワークでつながっていること
    コルレス銀行による代理送金を廃止せずに、XRPを現金資産として使用し始めると、現金管理業務が現状よりもさらに煩雑化するので、それは避けなければなりません。しかし、相手の銀行がコルレス銀行経由でしか着金できないとしたら、コルレス銀行経由の送金を廃止したくても廃止できないのです。それでは、XRP方式に投資をしても回収の見込みが立ちません。
    かくして、皆が始めるまで自分も始めないという状況が生まれ、結局誰も始めないまま時だけが過ぎていきます。これもまた、「鶏か卵か」の状態です。

 

現在のXRPは、この2つの「鶏か卵か」を抱えている状態にあると言えます。

この2つ「鶏か卵か」のある状況のわかりづらさが、事情を良く知らないの人の直感に「使えないものである」とイメージさせるのではないでしょうか。

Ripple社は、この2つの大きな「鶏か卵か」に対して、次のような手法で解決を試みている、と理解しています。

一つ目の「マーケットメーカーの鶏か卵か」には、「マーケットメーカーへのインセンティブ・プログラム」を実行することで解決を図ろうとしています。2016年5月29日現在、このプログラムの詳細はまだ公表されていませんが、マーケットメーカーへのファイナンス的な援助によって、市場への参画を促そうとしているものと見られます。

もう一つの「コルレス銀行の鶏か卵か」に対しては、「自行内の利用という狭い範囲でRCLの銀行導入を進める」というXRPの利用促進とは逆説的なスタンスを取り、RCLネットワークの普及後にXRPの導入を進めるという2段階方式で解決しようとしているように見えます。

 

XRPは不要なのか?

これまで述べてきた見解をまとめると、XRP不要説に関する私の見解は次の通りです。

XRPは、3つの条件(金融規制当局のガイドライン発行、マーケットメーカーのインセンティブ・プログラムの成功、広範囲な銀行のRCLネットワークの採用)を満たした時点ではじめて、海外送金の資金調達業務に効率化をもたらすためのスタートラインに立つことができる。現在は、その可能性にすぎない存在である。
3条件のうちいずれか一つでも満たせなくなるという観測が高まれば、XRPの市場価格は下がりやすくなる。その一方で、
3条件をクリアすると、突如として高い確度で大きな需要を持つように至る可能性を持つ。

Ripple社がIoVのビジョンを掲げていることを考えると、コルレス銀行業務の煩雑さを解消することは、彼らにとって、ひとつの重要なテーマであると考えられます。XRPがそのための役割を担っているというシステム的な側面を考えると、XRPが不要だという言説は、的を外していると言って良いでしょう。

 

最後に…

XRPは、国際送金における資金調達業務の効率化という明確な可能性を持っています。しかし、このXRP方式の事業の成否と言えば、Ripple社がベンチャー企業としては別次元の勢いで強力なリーダー陣を集結させているとはいえ、非常に難易度が高く、短期的に結果が出せる類のものではないと思います。
この事業に期待を寄せている人は、気長に待つこと、待てることが肝要です。

皆さんは、どのように判断されていますでしょうか。