IoV(Internet of Value)を構成する要素

Home » コラム » Internet of Value » IoV(Internet of Value)を構成する要素

2016年3月26日

前回の記事では、Internet of Value(価値のインターネット:以降IoVと呼ぶ)の世界のイメージを説明しました。

今回は、IoVの世界を実現するために必要な構成要素について筆者がこれまでに実施した調査をもとに概説します。(当記事は筆者の独自調査の結果であるため、説明内容に間違いがあった場合には随時訂正します)

次の図は、IoVの世界の構成要素を単純化したものです。単純化したといっても少し複雑な図になっていますが、これは大きく分けて3種類の要素が合わさっているからです。それでは、一つずつ順に説明していきましょう。

IoV構成要素図

 

①スピーディでほぼ無料の送金/為替ネットワーク

リアルタイム送金/為替ネットワークはIoVの根幹をなす要素です。

IoVの世界では、現在の世界よりも飛躍的に価値の交換が容易になっています。「価値の交換を簡単にできる」ようにするための、新しい世界の基盤が「リアルタイム送金/為替ネットワーク」です。

現在の送金/為替ネットワークは、既存の銀行のシステムによって構築されていますが、前回の記事でも取り上げたように、15時以降の送金依頼が翌営業日の扱いになってしまうほど「遅いネットワーク」です。この「遅いネットワーク」においては、送金にかかる手数料が高いというストレスも存在しています。国内の銀行間の送金については0円のサービスも存在しますが、多くの場合は100円~1,000円、海外送金に関しては2,000円から7,000円も必要になることが珍しくありません。

この、遅く手数料の高い送金/為替ネットワークを「スピーディでほぼ無料の送金/為替ネットワーク」に置き換えることが、IoVの基礎となります。

 

リアルタイム送金ネットワーク

「スピーディでほぼ無料の送金/為替ネットワーク」では、日本円や米ドルなどの従来の通貨に加えて、Bitcoinに代表される暗号通貨が主流の通貨として加わります。技術的な相性で言えば、既存の通貨よりもむしろBitcoin等の暗号通貨の方が圧倒的に合っています。そのため、このネットワークが普及すると、既存の通貨の存在価値は低下します。それもあってか、世界の政府や中央銀行が、各国の中央銀行が発行している既存の貨幣を、暗号通貨等の電子マネーに置き換えることを検討し始めています。

 

要素_リアルタイム送金ネットワーク(修正)このネットワークは、ブリッジネットワークと、そのネットワーク内で機能するエスクローコネクタの技術によって支えられています。

ブリッジネットワークは、コンセンサス(合意)プロセスを採用したモダンな分散データベースシステムのことです。これらのシステムは、ブロックチェーンや分散台帳と呼ばれる「取引のサイン・記録方式」を採用しています。これらの方式を簡単に表現すると、「ひとつずつの取引を複数のノード(=ネットワーク上のサーバ)によってチェック&承認し、その全ての取引の結果を誰でも閲覧することが出来る」方式と言うことができます。

エスクローコネクタは、取引が実行される際に、送金/着金の失敗を防ぐための仕組みです。エスクローとは、取引実行の際に、取引当事者とは直接関係のない中立な第三者が中間に入って決済を行うことで、安全な取引を保証する仕組みのことです。「スピーディでほぼ無料の送金/為替ネットワーク」においては、このエスクローの機能をエスクローコネクタが担い、システムが自動的に実行します。

このネットワークでは、通貨は前述の通り、既存通貨に加えて暗号通貨も扱います。

 

 

 

 

 

 

「スピーディでほぼ無料の送金/為替ネットワーク」のシステム基盤として、世界で最も有力視されているのrippleが、Ripple社が提供しているRipple Consensus Ledger(以降、RCLと呼ぶ)です。RCLは、国際送金のブリッジネットワークの役割を担うことを目的にして世界で稼働しているシステムです。RBS(ロイヤルバンク・オブ・スコットランド)などの海外の銀行で、既存の「遅く手数料の高い送金/為替ネットワーク」からRCLへの刷新が進んでいます。

RCLはオープンソースライセンスで提供されており、誰もがソースコードを入手することが出来ます。

IoVの概念は、Ripple社が提唱したのが始まりでした。そのことからも、IoVにおけるRipple社のRCLの基盤としての重要性を伺い知ることが出来ます。

 

②インターオペラブルネットワーク

続いて、IoVのもう一つのシステム基盤となるインターオペラブルネットワークについて説明します。インターオペラブルネットワーク

前項の説明でIoVにおける「スピーディでほぼ無料の送金/為替ネットワーク」の重要性を何となく理解して頂けたかと思いますが、送金/為替ネットワークのネットワークが改善されただけは、あくまで送金と為替が早く無料で出来るようになっただけです。これをIoVというには全くもって物足りません。

世の中には送金/為替の他にもたくさんの金融サービスがあります。例えば、株式、デリバティブ商品の取引などがそれにあたります。前回の記事で紹介した「ポイントとポイントの交換」サービスのような新しいサービスが今後登場することも予想されます。もっと言うと、金融サービスの枠にとらわれずに広く世界を見渡せば、電子取引は数多く存在しています。例えば音楽や本、映像の売買の多くが、インターネット上で実施されています。これらのサービスと前述の「スピーディでほぼ無料の送金/為替ネットワーク」を結びつけるものが、「インターオペラブルネットワーク」です。

さらに、IoVが進化した未来においては、サービスとサービスをつなげることが可能になると考えられます。例えば、株式とお金を組み合わせて車を買うなど、現在ではできない取引が簡単にできるようになるかもしれません。

要素_インターオペラブルネットワーク(修正)

 

インターオペラブルネットワークは、次項で説明する「スマートコントラクトサービス」と「スピーディでほぼ無料の送金/為替ネInerledgerットワーク」を接続します。この仕組みは、すでにW3Cによって「InterLedger Protocol」(以降、ILPと呼ぶ)というプロトコルが提案されています。

 

インターオペラブルネットワークのエスクローコネクタは、複数のサービスをまたいで決済に信頼性を提供します。エスクローコネクターによって、サービス間で取引を実行する際に、エスクロー業者を必要とせずに、システムが自動的にエスクロー機能を提供することが可能になります。この機能によって、サービス間を接続するための手数料をなくし、取引締結のスピードを大幅に向上することが可能になります。

 

 

 

 

③スマートコントラクトサービス

IoVの世界で、今後多くの企業によって提供されるサービスは、「スマートコントラクト」の形態を取る可能性が高くなってきています。

スマートコントラクトサービス

スマートコントラクトとは、ひとことで言うと「セキュアな自動取引システム」のことで、スマートコントラクトサービスとは、スマートコントラクトの方式で実現されるサービスのことです。

では、「セキュアな自動取引システム」とは何か。これを私たちの一番身近な例で言うと、街中でよく見かける自動販売機です。自動販売機は、お金を入れてボタンを押すと商品が出てきます。これを言い換えると、取引と同時に自動的にサービスが提供されていると言えます。スマートコントラクトとは、契約締結と同時に安全にサービスが自動提供される仕組みのことです。

この仕組みは、契約と実行の間に人間の管理者を必要としないので、手数料を排除し、提供時間を高速化することができます。

スマートコントラクトの技術を用いて既存サービスのシステム基盤を刷新することで、手数料の低減や取引時間の短縮化が期待されていると共に、今までにない新しいサービスの創出も期待されています。

これまで、スマートコントラクトを実現するためには、前述の例えで言えば、自動販売機のような専用の高価なシステムを作る必要があり、そのためには膨大な費用が必要とされていました。しかし、Blockchain技術の進化によって、分散型のスマートコントラクトシステムの構築が、以前よりも容易に可能になりつつあるのです。

その代表的なプラットフォームが、Ethereum(イーサリアム)とHyperLedger(ハイパーレッジャー)です。

 

Ethereumは、オープンソースライセンスで提供されています。2016年3月16日よりHomestead(ホームステッド)と呼ばれる安定版が稼働しています。Ethereumは、誰もが参加でき、過去のブロックチェーンデータを参照することができるパブリックブロックチェーンを採用しているのに対して、HyperLedgerは、プライベートブロックチェーンの世界標準としてなることを目指してプロジェクトが進められています。

 

HyperLedgerは、2016年3月現在においてはPoC(概念検証)の段階で、プロダクトとして稼働を始めてHyperledgerいません。しかし、HyperLdgerはLinux Foundationのイニシアチブのもとに、IBM、Blockstream、Digital Assetという大手、実績のあるITテクノロジーベンダーによるソースコードの提供を受けており、その他にも多くの企業の参画表明を得ています。そのため、HyperLedgerがエンタープライズ向けスマートコントラクトの標準システム基盤になる可能性が高いです。HyperLedgerもオープンソースライセンスとして開発が進められており、GoogleDocsにホワイトペーパーが寄稿さています。

 

 

以上のように、IoVは、3つの要素が複合して実現されるものと考えられます。

① 送金/為替ネットワークの劇的な効率化

② 送金/為替ネットワークとスマートコントラクトシステムの相互接続

③ スマートコントラクトサービスの進化

IoV構成要素図

 

これらに関するテクノロジーの進化やサービスの導入を、現在様々な組織が競い合っています。

今はまさに、IoVの黎明期と言えるでしょう。