IoV実現への道のり -Faster Payments効果基準に見るイノベーションの裏側-

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2016年4月9日

前回の寄稿で「スピーディでほぼ無料の送金/為替ネットワーク」がIoVの基盤であることを説明しましたが、2016年3月17日に、日本銀行の決済機構局内に新たに「FinTechセンター」を設立するという発表がありました。日本国内においてもIoVの基盤である早い決済システムが胎動しようとし始めています。

今回は、IoVの実現に向けて進む世界の中で、避けては通れない「イノベーションの裏側」の重要性について、寄稿します。

皆さんはFRBが2016年2月に発表したFaster Payments Effectiveness Criteria(スピーディな決済に関する効果判定基準)をご存知でしょうか。

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FRBのFaster Payment Task Forceというタスクフォースが「より良い決済システムの追及」を推進しています。

この取り組みの大きな成果として、前述のFaster Payments Effectiveness Criteriaが発表されたのです。全36項からなるこの基準を用いて、2017年に米国の決済業者を分析・評価し、結果を公表するそうです。

と、ここまでの話を聞いただけでは、お堅いお役所のお仕事のように聞こえます。が、その実施方法が面白いのです。それは、さながらWEB上で実施されるコンテストのイベントのようで、政府系の組織が実施するプログラムとしては実に面白い取り組みだなと感心させられます。

event-image

(上の画像は筆者が作ったイメージ図ですが) このコンテストの特設ページでは、決済の”Cutting-Edge(最先端)”なアイディアの募集を呼びかけています。米国の決済に関連する事業者は、全36基準の中から好きな基準に自己推薦の形で応募登録し、自社の自己PR映像を添付することができるようになっています。参加者の登録状況は”Showcase(展示場)”として一般にも公開されており、誰もが自己PR映像も閲覧することができます。イベントを盛り上げようとしているFRBの意図を感じます。

展示場ページの冒頭には、このような一文があります。
The Faster Payments Task Force is interested in learning about your cutting-edge ideas to make payments faster!

(ファスターペイメントタスクフォースは、決済スピードを早めることができるあなたの最先端のアイディアを知りたいです!)

文末に”びっくりマーク”がついてます… テンションが高い。

展示場ページで公開されている応募者を一覧にしました。
(Categoryの欄のみ筆者が独自に追記した情報です)

応募者一覧応募者一覧(Excelファイル)

応募者の中には、SWIFTのような大手の決済事業者から、Rippleのような新興企業まで様々な事業者が登録しています。

 

それでは、Faster Payments Effectiveness Criteriaの中身について見てみましょう。

この基準は前述の通り全36基準です。その範囲は、テクノロジー領域からユーザー企業の業務、事業者のガバナンスに至るまで非常に広い範囲に渡って基準を設定しています。

筆者独自の観点で、これらの基準を3つの分類「機能革新、標準化、管理能力」に分けて分析しました。

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<機能革新>

 決済のスピード向上、クロスボーダー化などの機能の大幅な向上

 

<標準化>

 決済電文フォーマットやオペレーションの業界標準への対応

 

<管理能力>

 決済に関連する安全性、コンプライアンス、ガバナンス等の管理能力

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その結果、実に50%を超える基準が「管理能力」に関するものでした。

「機能革新」についての基準は、3分の1程度でした。

また、「標準化」に関する基準が、全体の約1割でした。

カテゴリー別の基準数2

 

筆者は全体の50%以上の基準が「機能革新」、決済スピードの向上や国際間、事業者間のクロスボーダー化に関するものだと想像していましたが、事実は異なっていました。

この調査からわかったことは、「機能革新」は、FRBが評価する決済サービス全体のわずか3分の1程度の範囲の世界の革新でしかないということです。よくよく考えればおかしなことではないと思いますが、改めて勉強になりました。

技術革新を目の当たりにすると、その新しく輝かしい面に目がいってしまいがちになりますが、現実の世界にイノベーションをもたらすには、今回のFRBの基準に示されたようなサービスの管理能力や業界標準への対応といった裏側の領域が大きな割合を占めているということです。程度の差こそあれど、どの業界においてもイノベーションの実現においてはおよそ共通することなのではないでしょうか。

 

今回の結論 : 成功するためには、技術革新の裏側にも注目せよ(それ、50%は占めてますから)

 

 

最後に、36基準を日本語に翻訳した一覧を添付します。

FasterPaymentsCriteria(日本語訳Excel)