ビットコインとILPがもたらすエポックメイキングとは?

Home » コラム » Internet of Value » ビットコインとILPがもたらすエポックメイキングとは?

2016年5月22日

世間のIoVに関する注目は、まだまだ無いに等しいものです。

IoVをGoogleの日本語キーワード検索をしても、Internet of Valueのヒットは出てきません。100件目になると、あるショッピングサイトの商品IDの一部として「iov」が登場しますが、Internet of ValueのIoVは、検索ワードとしてヒットしないのです。まるで駆け出しの地方のご当地アイドルのごとく低い知名度です。

そんな、知名度の底辺をひた走る IoV ではありますが、今回は、今後注目すべきテーマを紹介します。それは、ビットコインとILPのコラボレーションがもたらす即時決済についてです。
これが実現すれば、ひとつのエポックメイキングになりうる、大きな可能性のある話です。

 

今更ですが、ビットコインとその課題とは?
bitcoin_logo

今回は、ビットコインという、それはそれで非常に深い世界の話と、ILPがつながる話です。
そのため、どうしてもビットコインの基本的な理解が必要になります。
そこで、まずはビットコインの基本的な内容について触れようと思います。

私はビットコインについては、ソースコードも読んだことがない「ド」がつくほどの素人なので、詳しい方々の記事を拝借しながら、要点を説明します。

まず、ビットコインとは、という初歩的な解説ですが、
FXトレーダーのTrendStreamさんという方の記事が、要点を短くまとめていてわかりやすいので、紹介します。

TrendStream:3分でわかるビットコインの基本

ビットコインについて何も知らない人は、上記のリンクを開いて読んでください。

 

では、続いて、ビットコインが抱える重要な課題について触れます。

ビットコインに投資されている方やGithubなどでビットコインのシステム仕様を調べたことがある人なら、おそらく誰もが知っていると思いますが、ビットコインには俗に「スケーラビリティ問題」などと呼ばれる課題があります。

これをひとことで言うと、送金処理にかかる時間がとても長くなってしまう問題です。
ビットコインは10分で送金が完了するように設計されていますが、それが何倍も何十倍もかかるようになってしまうという問題が、ビットコインにはあるのです。
この問題については、経緯を含めて詳しく解説している記事を紹介します。

ビットコイン百科事典:ビットコインの未来をかけたスケーラビリティ論争

上記の記事を読むとわかりますが、この問題はシステム設計の域を離れて、コミュニティの合意形成や、新たに生まれた権益者の政治的な問題に力点の中心が移り、利害関係によるさまざまなドラマを形成しています。

私個人はビットコインのコミュニティとは遠い存在なので、利害関係は抜きにして、純粋にシステムがシンプルな形で進化することを望みますが、もはや、そのようなシンプルな形での進化は実現し難い状況になっているように見えます。

 

スケーラビリティ問題の解決に向かうビットコイン

現在、この問題の解決のために提案されているのが、
Segregated Witnessというシステム負荷の軽減策と、LightningNetworkというシステム拡張策です。

Segregated Witnessは略してSegwit(セグウィット)と呼ばれています。
Segwitを大雑把に理解するとしたら、処理に必要なデータの量を減らして、一度に処理できる件数を増やそうということです。
それでも、一度に処理できる件数は2倍に届かない見込みです。
こちらについては、下記のサイトを参考にしてください。

コインポータル:Segwitって何だろう?

利用者が大幅に増加すれば、Segwit対応が完了しても処理時間が長くかかってしまう問題から逃れられません。そこで、次に実装が待たれているのがLightningNetworkです。
これは、ビットコインネットワークのオフチェーンで、ビットコインを送金できる仕組みのことです。

この、オフチェーン取引のイメージはこのようなものです。

lightningNetworkImage

 

現在は、このオフチェーン取引の方式によって、ビットコインのスケーラビリティ問題が解決されることが、期待されています。

上図を見るとわかると思いますが、LightningNetworkを実装すると、ビットコインは2つのネットワークプラットフォームをまたいだ複合プラットフォームになるので、メンテナビリティの観点では大きな問題になる可能性が高いと思います。しかし、前述の通りシステムモデリングの良し悪しとは別の世界で、対応案の良し悪しが測られているので、メンテナビリティの確保は諦めざるをえない様相です。ライトニングネットワーク以降のビットコインは、新しい機能を実装しにくくなるかもしれません。そうなると、ビットコインはベーシックな暗号決済インフラとしてイミュータブル化し、将来のニーズは、ビットコインから派生したプラットフォームが担う、というのが今歩んでいる道なのかもしれません。

 

Thunder Networkの特徴Thunder Networkのアナウンスメントより)

ともかく、今のビットコインにとって、LightningNetworkは重要です。
LightningNetworkを実装するプラットフォーム「Thunder Network」のアルファ版の特徴が、Blockchain社から2016年5月16日に発表されました。

  1. Settlement to the bitcoin blockchain
    ビットコインのブロックチェーン上で決済を行う

  2. Scale: According to our tests so far, we can achieve better-than-Visa scale (100,000 TPS) with only a few thousand nodes on the network
    処理速度は、Visaの処理能力(100,000トランザクション毎秒)を超える。これは数千台ノード上で実行したテストの結果である。

  3. Extremely cheap payments: fees will develop naturally, due to the free market in an open and permissionless network and will fundamentally be lower than on-chain payments
    支払い手数料は極めて安い。手数料の価格はオープンな市場によって形成され、基本的にビットコインのブロックチェーン上のコストよりも安くなる。

  4. Encryption and Authentication: All communications between all nodes and wallets are encrypted using AES-CTR and take place only after completing authentication.
    全てのノードとウォレット間の通信はAESアルゴリズムのCTRを用いて暗号化され、それらは認証が完了しなければ実行されない。

  5. Seed Peers and automatically provide them with network topology using a basic gossip protocol similar to the one used in the bitcoin network, which allows complex routes over multiple hops
    データ送信は、ビットコインネットワークで使われているゴシッププロトコル(P2Pネットワークに迅速に情報を伝える仕組み)と似ている。これに複数のホップ(中継者)を経由する複雑なルーティングが可能になる。

  6. Payment Channels can be opened and closed at will, with transactions settling onto the bitcoin blockchain
    支払いチャネルは、オープン型とクローズド型のどちらにもなりうるが、ビットコインのブロックチェーン上での支払いを利用する。

  7. Payment Debate: Across the route each hop will renegotiate a new status with the next hop, as a payment makes its way through the network with cryptography in place to prevent fraud
    詐欺を防止するために、次にどのホップに渡すのかを、ホップ毎に再ルーティングしている。暗号化ネットワークの中で実行されるそれぞれのトランザクションの中で。 

  8. Relaying Payments: TN will relay payments over multiple nodes in the network automatically, using encrypted routing. No one knows who made a payment, allowing for more privacy
    ThunderNetworkで自動的に複数のノードで中継される支払いにおいて、支払い者のプライバシーに関わる情報を誰も知ることは出来ない

  9. Settle payments automatically, no manual intervention needed. The settlement will ripple back through the network to provide proof-of-payment
    決済は自動で行われ、人の手の介在は不要である。決済においては、僅かな額をネットワークのproof-of-paymentとして渡すことになる。

  10. Instant Payments that are irrevocable the moment you see them
    即時決済は、ネットワークに発生した瞬間から取り消しはできない。

 

青字で一般ユーザーの注目ポイントを記載しましたが、KYCや消費者保護に関わる機能を組み込むなど、商用利用を意識したプラットフォームになっています。

 

ビットコインがILPとつながることで企業によるビットコイン導入の敷居は下がる

ところで、このビットコイン上の即時決済のプラットフォームが実現しても、ビットコインのネットワークが法定通貨のネットワークとつながるわけではありません。

例えば、あるスーパーマーケットが、ビットコインによる顧客の支払いを受けつけることにしたとします。

スーパーの顧客は支払いのために、ライトニングネットワークの自分のウォレットからスーパーのウォレットにビットコインを送り、スーパーマーケットの帳簿システムがこの入金を確認したとします。

きっと、一瞬で取引が成立します。

しかし、このような企業において、決済の仕事はそれだけではありません。

その他に、企業会計の処理や協力会社への支払いなどを行う必要があります。これらも全てビットコインで出来れば良いのですが、そう簡単にはいきません。そこに、ビットコインを法定通貨に為替交換するニーズがあると考えます。この為替交換は、人手に頼らず自動的に実行したいものでしょう。

それは、ILPによって、企業のシステムとライトニングネットワークがつながれば可能になります。

ILP-Lightning2

上図では、ILPベースのコネクトアプリケーションが、スーパーマーケットのシステムをビットコインネットワークやFXネットワークに接続する役割を担っています。

これを実現するために、まず、ILPアプリケーションを開発できるソリューションプロバイダーが、先進的な取り組みに前のめりな姿勢の事業会社を見つけ出し(口説き落とし?)、その事業会社向けにフロントエンド業務(顧客対応)とバックエンド業務(会計、資金管理)を含めたコネクトアプリケーションを開発するのです。このILPソリューションプロバイダーは、それらをもとに、業界の新しい基本形を作る立場になります。

この、フロントエンド業務とバックエンド業務の両方を含めた新しい基本形の誕生が、エポックメイキングとなるのです。

こうして新しいリーディングカンパニーとなったILPソリューションプロバイダーは、その後、基本形をカスタマイズして他の事業会社への横展開を進めるでしょう。こうして、この業界は徐々に、現在の企業システムから即時決済が可能なシステムへと進化していくのではないかと考えます。

ビットコインのライトニングネットワークが現実味を帯びてきた今だからこそ、ILPベースのコネクタを開発するソリューションプロバイダーの活躍には、より一層期待したいところです。