やがて危機が訪れる? いま、SI業界がしなければいけないこと 

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SI業界に限らず、日本の人手不足は深刻です。2015年7月以降、有効求人倍率は1.2倍を超えて、22年ぶりの高水準な状態にあるそうです。

日本は少子化に伴い今後も労働人口が減少し続けるので、SI業界に限ったことではないですが、優秀な人材を確保することがますます難しくなっていく可能性が高くなってきています。これは、個社レベルの問題ではなく、業界全体の深刻な問題です。この問題を克服するために、業界は何をしたらよいのでしょうか。今回はそれを考えてみたいと思います。

まずは表をひとつ見てもらいたいと思います。

これは、就職/転職に関するクチコミ・リサーチサイトの「Vorkers」のデータを編集して作成した、日本の全業界の中で、クチコミ評価が高い上位10社の情報です。

 

Vorkers_全業界

 ・ 上位10社のクチコミ総合評価の平均点は、 3.88点 (5点満点)です。

 ・ 平均残業時間は63.8時間

 ・ 有給休暇の平均消化率は54% 

総合評価が同点1位のP&Gとグーグルは共に外資系企業です。同じ外資系でも、3位以下の企業とは残業時間が短い点が特徴的です。

続いて、SI業界の上位の会社について見てみましょう。

 

Vorkers_SI業界_2

上表は、SI業界の上位10位と、全業界の上位10位の会社を比較した表です。

差異として特徴的なのは次の2点です。

 ・ SI業界上位の残業時間は、全業界の上位に比べると短い

 ・ SI業界上位の「20代の成長環境」「社員の士気」の評価が、全業界の上位に比べると特に低い

「SI業界の残業時間が短い」というのは、多くの業界関係者にとっては意外な結果ではないでしょうか。これは、SI業界の残業時間が短いという表現が適切ではなく、就職・転職の情報サイトでクチコミ評価が高い会社の残業時間が長い、と言うほうが正しいかもしれません。

もう一方の特徴である「20代の成長環境」「社員の士気」の評価が全業界の上位に比べると低いという事実、ここにSI業界の改善に関するヒントが隠れているのではないか、と考えます。昨今流行りの残業抑制も大事だとは思いますが、表面的な残業規制を推進するよりも大事なことがあるのではないか、と。

全業界の上位2社について、SI業界の上位会社が劣っている「20代の成長環境」「社員の士気」の観点で、Vorkersのクチコミをもとに、その特徴を見ていきましょう。

 

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<P&G>
 ・ 裁量が大きい
     職位に関係なくリーダーシップを取れる[Knowledg based Leadership]の文化がある。
     入社後数年で大きな意思決定に貢献できる。
 ・ トレーニングプログラムが充実しており、OJT、コーチング、フィードバックを大事にする文化がある
 ・ マーケティング手法、プロジェクトの進め方を身に着けられる
 ・ 英語を使ってビジネスをするコミュニケーションスキルが身につく

<グーグル>
 ・ プロダクトが日本と世界の多くのユーザーに利用してもらえることにやりがいを感じる
 ・ 自社の新しいサービスによって人々の生活が変わっていくことに仕事のやりがいを感じる
 ・ 同僚や上層部に優秀な人が多く、優秀な人と一緒に働く経験が財産になっている

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2社に共通しているのは、会社が下記の2点を社員に提供できているということです。
 ・ 「重要な仕事を任されている」「世界の役に立っている」といった、裁量や社会への影響力
 ・ トレーニングやOJTによるスキル向上の機会の充実

SI業界にありがちな仕事の細分化(PMとSEの分断、SEとプログラマーの分断、親会社と子会社の壁など)により、「裁量が小さい」とプロジェクトメンバーが感じていたら、それはSI業界の危機につながるシグナルではないでしょうか。

また、現場に出ずっぱりで、最新テクノロジーや業界動向に関するセミナーへの参加や、ユーザー業務に関するトレーニングを受講できていないメンバーがいたら、それも黄色信号です。さらに、開発や保守に関するプロセスが個人任せで、組織的に現場に良いプロセスを提供できていないプロジェクトがあれば、これも黄色信号です。

このようなことが、会社の至るところで起こっているようなら、それはすでに赤信号と言っても過言ではないでしょう。

SI各社は、これらの観点を自社の組織のKPIに組み込むべきです。この点は大事なので言い切ります。

 ・ 仕事は細分化させずに、一人のSE、プログラマーに裁量を大きく与え、重要な意思決定の責任や役割を与える。
 ・ 現場の仕事は業務時間の8割程度にして、新しいことを吸収する時間を確保する。
 ・ 開発や保守のプロセスは現場任せにせず、良いプロセスをトレーニングとOJTで伝授する。

このような点について、業界全体で推進していく必要性が、今後ますます高まっていくのではないかと考えます。
皆さんの職場はどうでしょうか、大事な仕事を任せられていると感じていますか?